「明日、夏至だって」
「夏至、って何の日だっけ?」
「一年で一番一日が長い日」
週に一度の早上がりの帰路、サクっと呑んでいる最中に聞こえて来た会話です。
そうか、もう夏至なんすね。
さすがに一日の長さは変わらないけど、一年で一番昼が長い日ではあります。正確には一日二日前後するんすかね?南半球とか極地ではどうなんでしょう…難しい事はさておき、一年の大切な節目である事は変わりありません。
夜と違って歌のタイトルにはなりにくそうな長い昼、始まりに相応しいお茶は? しばし考えて今朝は岩茶の矮脚にしました。
番頭がこよなく愛する上撰矮脚ではありません。茶荘で人気の矮脚でもなく、今朝のは今年の矮脚です。
半製品、と書くと何か出来損ないのような響きがありますが、まだ焙煎が完了する前の茶葉です。
岩茶の製茶には「毛茶」、という段階があります。これは殺青(発酵を止める行程)の後の状態なのですが、こちらの矮脚はもうちょっとその先まで進んだ状態です。一応乾燥がしっかり終わっているのでこのままでも製品としては成立します。
岩茶の焙煎というのは実に時間と手間がかかります。画像は火を熾した炭の上に灰をかぶせているところです。直火だと当然短時間で焙じる事は出来ますが、火力が強くなる為茶葉が焦げてしまいます。
葉に当たる熱が均一化するように丁寧に上物を作ります。けっこう面倒な作業な上、炭焙煎の場合はこの時点で既に下にはアツアツの炭がスタンバイされているのでかなりの蒸し暑さのもとでの作業になります。キツそうです、見るからに。
中の茶葉を一定間隔で天地返しをしたり、時々飲んでみて様子を確認しながら、ゆっくりと茶葉は仕上げられていきます。足火(高焙煎)の場合だと焙煎に二か月ぐらいかかったりもします。
今朝の矮脚はまだもう少し焙煎しますよ、という時点で時間切れになったのを小梅さんが持って帰ってきた、いわば途中経過です。
焙煎が進んでいない分、矮脚の持つ元々の特徴はよりシャープに感じられます。甘みであったり、香りであったり。じゃあそのままでいいじゃんか、というとそんな事はもちろん無くて、現状ではまだまだ青っぽさや生っぽさが気になります。半年、一年たったらどうなのか、というスパンで考えると、この状態ではまだまだお出しできるものにはなっていません。
ただ、青っぽいところも楽しもう、ぐらいに考えて淹れると、夏場の週初めの朝にはしっくりくる清々しいお茶として楽しめます。
出来上がりまでもう少し。楽しみ楽しみ。
何か合うお茶請けは…と頂き物差し入れBOXを見たら、見事にこれしか入ってませんでした。さすがにコレはちょっと…