あつはなついっすねえ(古典)。番頭です。
ここ最近、茶荘で試飲をされたお客様にはちょっと違和感があったのではないでしょうか、という、今日は小梅さんのお茶淹れの手順の変化です。
簡単に言ってしまうと、一種類のお茶に対して茶海を二つ使う、という一手間です。
判りやすいように写真は1)片口→2)茶海、というようにセッティングしましたが、実際にはガラスの茶海を二つ併用して試飲用のお茶をお淹れするパターンが多々見られます。
試飲のお茶をお淹れする時は、お客様にお茶の味や香りをお試しいただくのが唯一最大の目的ですので、この「ダブル茶海」はお作法でも必殺技でもなく、ちょっとした工夫です。
手順は単純です。最初にお茶を入れた茶海から、もう一つの空の茶海にお茶を移すだけです。お客様の茶杯にはこの二つ目の茶海からお茶をお入れします。
目的はざっくり二つです。
1)夏場の暑い盛りなので、少しお茶の温度を下げたほうが、「味」が判りやすくかつ飲み疲れしにくいです。そもそも味単体で考えると、アツアツよりも少し冷めてからのほうがよりクリアに舌、口全体、喉の各箇所のセンサーが働きやすいです。 佛手(台湾茶)の持ち味のバターっぽいこってり感が冷めてからのほうが感じられるのもこの理由からです。 他方、香りは湯温が高い時のほうが立ちますし、一煎目でより強く感じられます。
2)そこで、最初の茶海からすばやくお茶をもう一つの茶海に移すことで、最初の茶海に残った「杯底香」で「香り」を確認するようにします。茶海から茶海へお茶を移す事で約10℃あるいはそれ以上にお茶の温度が下がります。逆にいえば最初の茶海にはその10℃分の余熱が残るわけですね。気化したお茶の香りは最初の茶海により鮮明に残るのでその香りを楽しめば良いのです。 この二つの茶海は、言い換えれば台湾茶芸の聞香杯と茶杯をそのまま大きくしたようなものですね。
寒い冬には高い温度のままで味わっていただき、各々の茶杯に残る杯底香を楽しんでいただいたほうがベターですが、夏場、特に短時間で何杯も飲むような試飲の場合はこの「ダブル茶海」も一つのアイデアだと思います。
茶海が一つしかない場合は、最初の一つは大きめの湯呑みなんかでも代用できますんで、是非一度お試しあれ。