宜興の作陶家、裴春燕さんの茶壺です。 「裴」という姓は中国にも韓国にもありますが、中国の場合は「ハイ」、韓国の場合は「ペ」という発音に近いようです。「春燕」という名前は割とポピュラーらしく、小梅さんの雲南の友人は「楊春燕」さんです。番頭には「秋燕」さんという知り合いがいます。
30代後半の女性で、同じく作陶家を親に持ち、幼い頃から陶芸に親しんできた云々、と作品集の人物紹介にはあります。
「経典」、いわゆる伝統的な形状の茶壺は一通りこなすオールラウンダーらしいですが、筋紋(花弁や果物の房のような紋様)壺が特に得意なようです。他にも竹モチーフの茶壺も多く目立ちます。
【玉蘭花開】(紫泥/約300ml)
玉蘭というのはモクレンの仲間らしいす。すみません、相変わらず花鳥関係に弱くて。上海市の市花の白玉蘭というのがこの花の事らしいです。
ベースになっている形は楊さんの【線得】によく似ています。なので番頭の好みですね。平蓋で丸みがあり、使い勝手のよさそうな茶壺です。使われている紫泥がやや明るめなのは焼き入れの温度由来のようです。
【蓮藕】(朱泥/約170ml)
辞書で調べたら「藕」とは蓮の根の事と出ていました。蓮藕…って事はモロにレンコンの事みたいです。マット感のある明るい朱泥で、育て甲斐がありそうです。
初見では何か妙な絞りが入った口とか把だなあ、と不思議に思いましたが口も把もレンコンになっているんですね。断面図ではなくて全体図のほうの。
【錦襄】(朱泥/約150ml)
意味がどうしても判らない名前の茶壺です。これは本人に聞いてみないといかんすね。復古(倣古)をベースにした大人しい形の茶壺です。
形状的には一番オーソドクスで茶葉の種類を問わずに使える茶壺のようです。
【菊蕾】 (朱泥/約150ml)
判りやすい名前で、かつポピュラーな茶壺です。蓋よりも茶壺の縁が若干高くなるように波打っています。蓋の持ち手も菊の蕾になっています。
底も高台で切らずにそのまま筋紋が延びています。細やかに手が入っている茶壺という印象で、作り手の真摯で繊細なもの作りが感じられます。
小梅さんが会って話をして人柄と腕前の両方で「この人は大丈夫」と思い、とりあえずお付き合い始めとしてサンプル代わりに各一点仕入れました。どれも一点物で本日より茶荘の棚に飾っております。楊さん、周さん親子同様に長いお付き合いになりそうな予感が致します。