小梅さんは5時45分発の空港バスで羽田へ。一路広州を目指します。直行便で5時間15分のフライト。長い一日になりそうです。
いつものように茶盤の上を番頭仕様に直して、「るすばんはたのしいるすばんはたのしいるすばんはたのしい」と自分に暗示をかけたら一週間の留守番の始まりです。
今朝は久し振りに岩茶の老叢をば。個人的に好きなお茶の一つです。
特徴は何と言ってもやたらとデカい茶葉です。他の岩茶の50gの袋に25gしか入らないくらいに大らかな葉っぱです。
老叢、というのは特に記さない限りは「老叢水仙」を指します。なのでこの茶葉も品種上は水仙です。
普通の水仙と違うの樹齢が古いのと、茶畑が畝の体をなしていないという点です。呉三地、程墩といった、観光の中心である風景区(名岩茶区)の裏のほうの標高の高い山のほうが名産地です。
柔らかい味わいがたっぷりと続く岩茶なのでいつもより大ぶりな烏泥の倒把西施壺を使って淹れます。
茶葉の大渋滞も葉の大きな老叢を淹れる時の「あるある」です。往生せいやあ、などと小声で呟きながらも葉を壊さないように根気よく茶壺に収めていきます。
温めた茶壺に入れた葉はどこかべっこう飴を思わせる少しだけこってりとした、でも穏やかな香りです。
一煎目の茶海の底からは落雁とかの和菓子のちょっとひなびた甘みのある香り。上品な和菓子とこれまた上品なお香の混ざったような香りがすーっと立ち上がってきます。
茶杯のお茶を口に含むと、それまでの香りから予想されるはずっと控え目な甘さと檜のような香り…温泉なんかのヒノキ風呂のアレです。
色んな香りが、どれもあまりはっきりと主張せずに常にバックグラウンドで漂っているような印象です。
水仙特有のほんわか優しい味わいに、さらに落ち着きを加えたようなバランスの良いお茶です。
この水仙が採れたあたりは野生の雀舌なんかも生えてます。特に呉三地は香り系の岩茶の名産地として近年人気が出ているようです。いわゆる老叢水仙とか老水仙はけっこう飲んだ事があるほうの岩茶ですが、やたら日なたくさかったり酸味が強かったり鄙びた味わいだったり…と特徴が分かれるお茶です。小梅茶荘の老叢は何と言うかすーっとした味わいが持ち味です。頼りないとか薄味なのではなく、穏やかだけどしっかりしたお茶という、どこか寡黙な印象です。
大ぶりな茶壺でたっぷり5煎。葉の大きさがよく判る葉底です。まだ2〜3煎は余裕で出そうですね。写真撮ったら茶壺に戻しておきましょ。
ううむ、やっぱ好きだな、このお茶は。
老叢、茶荘の棚に並んでおります。試飲もお気軽にお申し付け下さいまし。