バックヤードで捜し物をしていたら、懐かしいお茶が見つかりました。普通に置いてあったんで隠していた訳じゃなく、単に番頭が普段茶棚の管理を小梅さんに任せっぱなしにしているだけです。が、それにしても随分とご無沙汰のお茶です。
「老水仙」
1996年のお茶です。平成だと8年すかね。20世紀っすね。
茶荘の開店当時、多分最初の年か二年目あたりには茶荘の棚に並んでいた商品でした。
紛らわしいのですが、同じ水仙でも「老叢」が樹齢の古い茶樹の葉、というのに対して「老水仙」は製茶してから年数が経っている、所謂陳年茶の水仙です。年数を経て美味しく変化する、というのが絶対条件なので大抵は樹齢も古く樹勢も強い野趣あふれる茶樹の葉から作られています。つまり老叢の老茶、って事ですね。
カッサカサに乾燥した茶葉は見た目から想像できないくらい軽いです。それだけしっかりと水分が抜けているので経年変化に強いんですね。
ちょっと鄙びた、干し草を思わせる香りと、だし昆布のようなアミノ酸の香りがします。あらためて茶葉は乾物なんだな、と思い出すようなしっかりとした香りです。
製茶してから20年以上経つ茶葉です。そもそも8年か9年前に茶荘に来た時からすでに老茶でした。その頃に飲んだ印象はとにかく鄙びた、干し草や藁のような香りで、ちょっとクセがあるかな、という感じでした。かすかにスモーキーで日なたのにおいがして好き嫌いが分かれる岩茶だった記憶があります。
それから7年だか8年だかが経過した今、老水仙はなんだかとても柔らかくなっていました。タイムマシンを持っていないんで最後に飲んだ時の老水仙をここに持って来て飲み比べる、なんて事は出来ないのですが、番頭の記憶の中にある老水仙はもっとなんつうか長所と短所がはっきりしたお茶でした。
今朝飲んだ老水仙は水仙らしい優しい甘みと、年数を経た事によるふくよかさ、強めの炭焙された事による火香がかすかに残る円熟味あふれるお茶でした。ガツンと来る強さやボディの厚みというよりは、じんわり染み込んでくる味わい。鼻・のど・口の全ての部分にサラウンドで感じられる美味しさです。
トシ取るってのも、悪い事ばっかじゃないな…
ちょっと嬉しくなって、ちょっと元気が出ました。こういう美味しいお茶を手が出せる値段で手に入れる、ってのが年々とても難しくなってますけんど、小梅さんは負けねえぞう(他人任せ)。