今日の一杯は武夷岩茶の水仙です。
水仙に始まり水仙に至る、というぐらい岩茶の中では一番スタンダードな品種です。
スタンダード、といっても決して「ありふれた」とか「普及品の」お茶ではありません。事実出来が良い水仙は他のどんな珍しい品種よありも価値があるとされ、値段も高いです。岩茶の味の規準であり、また岩茶を学ぶのに最も適した品種だと思います。
香りの肉桂、味の水仙。水仙が特に優れているのはクセの無いバランスのとれた味わいです。台湾高山茶のようなフルーティさと岩茶特有のどっしりとした深みのある味が両方楽しめます。 水仙種はどこの茶農や茶業でも扱っています。大振りでギザギザの大きい葉っぱが特徴です。 一番有名な武夷岩茶ですが、もともとは外来種だそうです。
どこの茶業でも扱っているため、水仙だけでもいろんな葉が家にあります。今日の水仙は福蓮という大きな茶業のものです。よく管理された近代的な工場と、多品種を誇る広大な茶畑を持つ新興の会社です。祝先生のところと違い岩山の奥深いところで栽培していないので岩韵はそれほど鮮烈ではありませんが、安定した品質と品種ごとによく考えた焙煎をした良いお茶が多いです。個人的にはここは水仙や肉桂といったメジャーな品種が上手だと思います。
水仙はスタンダードであるが故に、どうしても飲む側の点数も辛くなります。もともとわずかに酸味が感じられる品種ですが、葉が良くなかったり加工が悪いと嫌な酸っぱさが残ってしまいます。保存が悪くても同じです。逆に言えば酸味で茶葉の善し悪しが判断できます。採点が辛くなるのはそれだけ判りやすい味だからとも言えるかもしれません。 今日の葉は合格のようで、喉に残るかすかな渋みと、その渋みが引っ張ってくる甘みを楽しむ事ができました。