番頭ですアタマから湯気でてます。あぢいす。
暑かろうが寒かろうが試飲。体育会系茶師の小梅さんはとにかく遠慮容赦なくアッツアツのお茶を何種類も飲ませてくれます。 「飲まないと判りませんから」いつもの決まり文句。いえね、こんな暑い日に飲んでも何もわからんのよ、こっちは。
そんな、泣いても謝っても回避できない日々の試飲。何種類も味や香りを確かめるもんだからどうしても混乱します。鶏のように三歩歩けば忘れてしまう番頭は複数のお茶の試飲の時にはすぐに訳がわからなくなっちまい、立ち往生です。 なので必ず味に基準を作っています。 これは番頭に限った事ではなく、小梅さんにも基準はあります。番頭の場合は左側の茶葉、武夷水仙です。小梅さんは武夷肉桂。
水仙、という品種は広く栽培されている茶葉で青茶に使われる葉の中では一番ポピュラー。なので往々にして軽く見られがちです。ただ、武夷水仙の場合、美味しくて出来の良い茶葉は本当に美味しく、そしてびっくりするほど高いです。舌の両サイドの裏側にかすかな酸味が感じられるのが特徴です。甘み香りともに優しく、そして味も柔らかい岩茶です。香り味ともに極端に出っ張ったり引っ込んだりしていないので岩茶の基準にはなりやすいと思います。 グラフで言うとX=0, Y=Oの座標軸、つう感じで。
もっとも番頭が水仙を軸にしているのはそんなもっともらしい理由ではなく、単に「ほぼいつでも利き分けられる唯一のお茶」だからです。 なので岩茶の試飲をする時、特に難しいお茶の時には小梅さんに頼んで水仙を比較対象用に入れてもらいます。 子供の自転車の補助輪みたいなモンです。まだまだヨロヨロと足下が覚束ないんで。
方や小梅さんの軸は肉桂。図らずも岩茶の両翼のような水仙と肉桂にわかれました。もちろん小梅さんは肉桂を入れなくても試飲は出来ますし、軸が無いとそれぞれのお茶の座標軸がわかんない、なんて事はありません。 小梅さんにとっての肉桂は「私が好きな味と香りの傾向」の絶対的な存在、らしいです。それだけに小梅さんの肉桂に対する評価基準は厳しいです。他の品種に甘い、というワケではないです。実際「そこまで厳しくせんでも」と岩茶の肩を持ちたくなるぐらいでして。 ただ、肉桂に関してはやはり譲れない拘りはおっきいみたいで、武夷山で毎日茶葉を選んでお茶を作っている時に電話しても「今日は肉桂」つう日が多いです。
お茶の軸、番頭はあくまで自分用の補助輪なのでお客様に率先して水仙をお淹れしてはいません。小梅さんは試飲の時、お客様との会話の端々や、最初にお淹れした水出しのお茶に対する反応を見て肉桂をお出しする事が多いです。 小梅さん曰く「肉桂は味も香りも強いので、誰にでも合うお茶ではないです。でも、合う方には本当に美味しいお茶なので」との事。 ううむ、何だか判ったような判らんような、禅問答のようなオチになってしまいました。 明日はもうちょっと涼しくなるようなお話しをせにゃいかんですね、こりゃあ。