甘酒横丁交差点のすぐ近く、親子丼の長い列でお馴染み玉ひでさんの並びに、老舗の喫茶店があります。
カフェでも、コーヒーショップでもない「喫茶店」 喫茶店なのでランチとかはないです。食べる物はせいぜいアイスとかトースト…トーストは浅草ペリカンのパンを使用してるらしいす。
快生軒、というのがお店の名前なんですが、名前の前に「喫茶去」という単語が入ります。人によってはこの「喫茶去」を店名だと思い込む事もあるそうで。
この「喫茶去」という言葉、一言で言うと「まあお茶でも一服」という意味になります。
もともとは禅語です。詳しいエピソードとか説明は「喫茶去 禅語」あたりで検索してくだされ。
昔、偉い和尚さんのところに僧Aが訪ねてきた時、和尚が「お前、前に来た事ある?」と聞き、それに対して僧Aは「はい」と答えた。したっけ(←何故か千葉弁)和尚が「そっか、じゃあお茶でも一服飲んでいけ」と。対して後日訪れた僧Bは「いいえ」と。和尚は『いちげんさん』である僧Bに対しても同じように「そっか、ま一服してけ」と。。
開店以来、大雨の日を除き毎日茶荘の入り口に出ている「ご案内」 折々に文章は変わりますが、変わらないのは一番大きく書かれた「お茶をどうぞ」の文字です。
イベントのある時には「給茶ポイント」だの「本日20%引き」といったエクストラな告知が出たりもしますが、この「お茶をどうぞ」がなくなる事はありません。
飲食店ではなくて茶葉とか茶器を売る店ですんで「お茶をどうぞ」つう言葉はいささか不適切、ってのは重々承知してはおります。
ただ、「この店何だろう?」とおっかなびっくり外から茶荘の中をのぞき込んでる通りすがりの人にも「中へどうぞ」という言葉と、飲むだけでも全然構わないからお入り下さいという気持ちはいつも、いつまでも持っていたいな、と。
禅の精神とかそういう難しい事はよくわからんのですが、喫茶去、という言葉は何かいいですね。人形町らしいとも言えますし。
中国や台湾に行くと、茶座に黙って座っただけで誰何される事もなく当たり前のようにお茶が出てくる場面に多くでくわします。「お前、誰?」もなければ「いやいやようこそいらっしゃいました」も無い、ただ黙ってお茶が出てくる不思議な場所と空間です。 喫茶去、というのはもてなしの心つうより、そういう分け隔てなく人に接する姿の表現かもしれないっすね。
・・・簡単そうで難しいんですよね、その自然体つうヤツが。