今年の岩茶も徐々に揃い始めました。
「もうちょっと焙煎が落ち着いてから」という事でしばらく様子を観察していたお茶、もう飲み頃、というお茶。中には来年まで、あるいはその後まで待った方が良いな、という非常に気長な大器晩成型のお茶もあります。
もちろん見ただけでは判断が付かないので、ひたすら飲んでみて、期間を置いてまた飲んで…と確認作業を繰り返します。
そんな中で、新茶を待っている間で上撰肉桂はそれまでの茶葉をすべて使い切ってしまい、売り切れになっていました。
上撰肉桂はいわば当茶荘の岩茶の顔ともいうべきお茶です。矮脚烏龍、紫紅袍等々、奇跡のように出来の良いお茶は毎年なんだかんだで見つかります。売れ行きだけだったらもっと判りやすい奇蘭や金観音のほうがずっと上です。 でも岩茶の顔はいつでも「肉桂」です、小梅茶荘の場合。
味わいは至ってオーソドックス。かつ濃厚です。濃い、という表現は何か苦そうだったりクセがありそうなイメージを伴ってきますが、この場合の濃いは「シック」=分厚いに近いとお考え下さい。強さ、味わい、甘み…岩茶の持ち味を片っ端から鍋に全部ぶちこんで三日間煮詰めたような、そんな分厚さです。でも口当たりはすっきりとした「お茶の味」です。このあたりは飲んでいただかないと、番頭の貧困な表現力ではとても追いつきません。
茶荘のシンボル、なお茶なので是非飲んでいただきたいお茶です。祝先生ご自慢の畑で育った茶葉のしかも上撰なので、本当は北斗や水金亀と同じかそれ以上のお値段になっちまうんですが、そういう理由でお値段は以前の上撰肉桂からの据え置きです。番頭頑張ってます。
肉桂と並ぶもう一つのベーシック。水仙も今年の新茶に切り替えました。実はこちらのほうが一足先に今年の茶葉になったんですが、なんとなく「肉桂とお揃いでね」みたいな遠慮があってご紹介をあまりしてない事に気がつきました。
水仙は大ぶりで厚みのある茶葉。そんな見かけとは逆に華やかな香りと穏やかな味わいのお茶です。ちょっと酸味があって、それがこのお茶の爽やかさを一層引き立てます。焙煎のごく浅いものから、こってりとしたカラメルっぽい甘みが出るまで火を入れたものまで、仕上げかたのバリエーションが一番豊富なのも水仙です。
今年の水仙(今現在茶荘に並んでるのがそうです)は中焙煎よりやや軽めに仕上げてあります。こってりとした甘みではなく、穏やかさに重点を置いた作りですね。上撰肉桂のような真っ向から「どうだ!」と主張する味わいではなく、さっぱりとした第一印象と後からじんわり来る多幸感が味わえるお茶だと思います。打たせて取るタイプですね、ピッチャーで例えれば。
中国茶に限らずお茶が好きでよく飲む方は肉桂を好まれる傾向が強いようです。確たるデータからではなく経験則からですが。ちなみに小梅さんが一番好きな岩茶も肉桂、一番選ぶのに苦労してるのも毎年肉桂のようです。
水仙も肉桂もエースとはいえ気さくなお茶なので、お気軽にお試し下さい。岩茶の入り口でもあり、一番奥のほうでもある2種類のお茶は飲み比べても、どっちかをじっくりと味わっても楽しいです。