試飲も一段落。ようやく「小梅茶荘の」劉さんの凍頂春茶も決まり、ほっと一息の小梅さんはいそいそと肉まん(パオヅ)など作っております。美味いんすよ。
評茶の苦行から解放された番頭は、毎日小梅さん宛に届く大量の画像を整理しております。この時期になるとバイヤーさんも生産者さんも「すげえだろう、どうだどうだ」な情報をたくさん送りつけてきて、ついでに小梅さんに「来る時買ってきて」なリクエストも送りつけてきます。さすがに南部鉄瓶は一段落しましたが、「何でこんなモン?」というリクエストが多くて毎回笑ってしまいます。今年の注目株は「ガラスの片口」。当然メイドインジャパンが基本です。
今日の画像は武夷山、祝先生の婿殿からです。祝先生はなかなかどうして理論的で話し上手な茶農さんなのですが、基本的にオフラインな人なんで微信とかQQとかやんないんですね。そのぶん婿殿が積極的に茶畑や茶葉、製茶現場の情報を発信してくれます。このあたりの機微は人形町の老舗さんとちょっと似ております。
一連の画像には「高脚烏龍」と短い説明がついてきました。
高脚烏龍というのは岩茶の品種の名前です。肉桂とか水仙とか金観音とかと同じですな。耳慣れない名前ですが岩茶としてはかなり昔からある古参の一つです。
品種としての烏龍には「高脚」「矮脚」の二種類があり、それぞれ葉の付け根部分の長さが違う赤の他人です。当茶荘で扱っているのは「矮脚」のほうです。番頭はこの高脚を飲んだ事が無いのですが、小梅さんに聞くと高脚のほうはどっちかというとさっぱりとしたオーソドックスな味わいで、矮脚のほうが香りも甘みもしっかりしているとの事。
その昔、科挙の受験で福建に渡った台湾の苦学生(つっても結構なトシだったようですが)が武夷山の茶樹を持ち帰り、故郷台湾中部の山に植えたのが凍頂烏龍茶で、台湾烏龍茶の始まりとされています。
その時に持ち帰った「○○烏龍」がこの高脚烏龍ではないか、と言われています。○○の部分はどうやら確定しないようですが。
台湾のブランディングが功を奏したのか、サントリーさん伊藤園さんが頑張ったからか、「ウーロン茶」という名前は半発酵茶の代表のように認識されてきました。中国茶の代表といっても過言ではないでしょう。海外でもOohlong Teaという名前はとてもポピュラーです。
中国では昨年にとうとう半発酵茶に分類されるお茶を「青茶」から「烏龍茶」に変更しました。そんだけポピュラーになった烏龍茶の「烏龍」の由来の茶樹はそれほど騒がれる事も珍重される事もなく、武夷山で今年も静かに収穫の時を迎えます。
飲んでみたいな、と思います。実際、それほど稀少種でも高級品種でもないようなのですが機会に恵まれません。こういうのを「茶之縁」っていうみたいです。