番頭す。小梅さんがお留守なので、これ幸いと小梅さんが持ち帰ったサンプルのお茶を飲んでいます。
今日のは白瑞香の「毛茶」。 毛茶、ってのは簡単に言っちゃうと完成の一工程手前の半製品のお茶です。日本茶で言うところの荒茶みないなモンだとお考え下さい。
発酵ー揉捻ー乾燥までが終わった時点の茶葉です。岩茶の場合はここから焙煎や選別の工程に入ります。もし無焙煎で仕上げる場合でもこの時点ではまだ乾燥が十分ではないので、どっちにしろまだ「製品」ではありません。 なので当然まだ葉っぱっぽさが残っています。このまま香りを嗅ぐと白瑞香の華やかな香りと毛茶特有のちょっとスパイシーな青さが鼻に抜けます。お茶がツバキ科だ、つう事を再認識するような強い香りです。
こちらは完成品、「売り物」の白瑞香です。香木系の穏やかな香りが持ち味の白瑞香はそれを活かす為あまり焙煎を強くかけません。茶荘の棚に並んでいる岩茶の中では雀舌と並んで一番軽い火入れで仕上げています。それでも見た目にこれだけの違いがあります。 火が入っている為赤みが強く濃色で、葉は小さく(細かく)なります。焙煎の強い足火の茶葉だと毛茶との違いはもっと顕著になります。毛茶と違い、この状態での茶葉はあまり香りがしません。
言うまでもなく左が毛茶です。沈丁花のような強い花香は毛茶のほうが判りやすく感じる事ができます。いっぽうお茶としてのふんわりとしたふくよかな味わいや甘みという点では毛茶はまだまだです。焙煎をしていないのに茶水にしっかり色がついているのは、それだけ発酵がしっかりしているという事です。発酵と焙煎は時にごっちゃになったり、1セットで考えられるのですが、やはり発酵が必要十分にされているかどうか、というのは発酵茶の味わいの背骨みたいなものですので、ここはかなり大事です。毛茶の状態、あるいはそのもっと前の状態で評茶をするのも、茶葉のもともとのポテンシャルを見るのと同時にこの発酵の具合を確認する為です。
毛茶は飲み続けると胃に負担を感じたり、ちょっと気分が悪くなったりする場合があります。ま、いわば生焼けの魚食ってるようなモンですんで。一応ここが限界、ってあたりまで飲んで今日はおしまい。それぞれの葉底がこんな感じです。
毛茶のほうは焙煎前なので復元率が高いです。とはいえ揉捻してあるのでヨリヨリ感は残りますが。お茶と葉っぱの真ん中あたりくらいですかね。
ちなみにこれはもうちょっと手前の工程の茶葉。小梅さんが茶葉を選ぶのはこのあたりの時です。昔はのどかで、毛茶あるいはちょっと焙煎したあたりでも間に合ったんですが、岩茶人気の現在、毛茶待ってると出遅れちゃうみたいです。茶葉の買い付けって大変なんですねえ(←謎の他人事)
葉っぱの体をなしていても、焙煎してなくても、ちゃんと発酵されているのは葉底で判ります。葉の縁のぐるりが赤く変色しているからです。この赤みがしっかりしていればそれだけ発酵が強い、って事です。焙煎かけちゃうとこの赤みが判りにくくなるんで、毛茶の時にチェックしといたほうが良いポイントの一つでもあります。
こうして毛茶と出来上がったお茶を飲み比べると、毛茶からは発酵の大切さが、完成したお茶からは焙煎する事の意味が、それぞれ別々に判ってきて面白いです。
さて、茶殻を片付けて小梅さんに見つからないように隠蔽工作しましょうか。勝手に飲むと怒られちゃうんで、毛茶とかは。