ここ数日、大気が不安定なんだそうで。
雹、局地的な豪雨、落雷。6月らしいっちゃあらしいし、降らなきゃ降らないで夏場の水が心配ではありますが。もうちょっと穏やかにしてくれるといいんですけど。
昨日は黄玫瑰を淹れました。朝の散歩の道すがら漂ってきたクチナシの芳しい香りに誘われて。
多感な乙女みたいな書き方になってしまいましたが、根が単純な番頭はクチナシの花=黄玫瑰と最短距離でたどり着くように脳にインプットされています。
小梅茶荘が扱っている岩茶の中では人気のある定番の品種なので、黄玫瑰についてはけっこう頻繁にご紹介していると思いますが、一応基本的な事だけ少し。
黄玫瑰は品種改良(交配)で出来た新品種です。両親は黄金桂と黄観音。黄観音はそもそも黄金桂と鉄観音という、福建省南部を代表する品種です。なのでちょっとややこしいのですが、黄玫瑰は第一世代と第二世代を両親に持つ第三世代の新品種とお考え下さい。黄金桂の血統が強いので、キンモクセイっぽい花香が特徴の茶葉、とされています。ここ数年で一気に産量が増えている品種の筆頭ではないかと思います。軽やかでフラワリーならそれもむべなるかな。
出来が安定している品種ではなりますが、それでも毎年ごとに味や香りに特徴があります。同じ畑で同じ気象条件で育ってないので個性はあって当たり前なので当たり外れというより、まさに持ち味の違いだと思います。
直近の黄玫瑰=2020年産のものは比較的厚みがあって、派手目なイメージの黄玫瑰の中では落ち着いたほうだと思います。大人しい反面、香りや味わいが奥のほうから湧いてくるような、表層ではなく深層に美味しさのあるお茶という印象です。
淹れている時も口に含んだ時も、より鮮明に感じるのは黄観音や黄金桂のような強い桂花香よりも、ライチやアンズのようなすっきりとしたフルーティさです。見た目は親にあんま似てない子、って感じでしょうか。
そんな印象は飲み干した茶杯の残り香をかいだ時に一変します。
こってりとしたエキゾチックな花の香り。番頭がクチナシと紐付けて記憶しているのはこの杯底香です。ヘタするとクチナシのこってりよりもっとこってり、いやこってり通り越してねっとり。蜜を煮詰めたような甘くて濃厚な花香はキンモクセイとはまたちょっと違います。ちょうど季節ですんで、お近くにクチナシの木が植わっていたら鼻に花を、ちゃうわ花に鼻を近づけてみてください。2020年の黄玫瑰の杯底香はそんな感じです。着香もなんもしていないのにこの香りはなんぞ?と慣れている筈の番頭でさえクラクラするくらいの清冽な香りです。
水出しがね、また美味いんすよ、黄玫瑰。ちょっと長めの時間で濃いめに出して香りを楽しむもよし。ささっと短めでさっぱりとしたフルーティなのをゴクゴクするもまた良し。
2〜3煎ほど熱々で飲んで残り香を楽しんでからそのまま水出し、ってのもアリです。