美味しい岩茶、北斗。
何を今さら、と言われようが美味しいものは美味しいです。
番頭の好みの岩茶の一つです。同じく好きな岩茶である上撰矮脚に較べるとふんわりとした柔らかさが持ち味です。
淡麗、という表現がしっくりきますかね。厳しさは微塵も感じられないけど、どこか芯がしっかりした、説得力のある味わいです。北斗、正確には北斗一号という寝台列車みたいな品種名です。品種名としての北斗は武夷山原種の茶葉で、言うならば「初期メンバー」の一員です。北斗というのは北斗峰という武夷山の名峰の名前でもあります。とまあ由緒正しい岩茶、だとお考え下さい。北斗一号は北斗に品種改良を加えながら増やしていったものです。
原生の北斗の持ち味をしっかりと受け継いだ北斗一号は、増やしていったとはいえ産量が決して多くはない品種です。たおやかさがウリの品種は、そのせいかあまり沢山作られてはいないように感じられます。葉が小さかったり薄かったりすると採れ高が上がらないとか、日照や降水量といった外的要因に左右されやすいからかもしんないですね。
現在当茶荘では上撰の北斗とお値頃な北斗('19)の2種類があります。どちらかというと華やかさや甘みが判りやすいのが2019年の北斗、甘みや香りが大人しく、その分味わいに奥行きが感じられるより柔らかいのは上撰北斗のほうです。思い出補正つうのがあるので番頭は上撰のほうが好みですが、2019年の北斗は飲みやすく、とっつきやすいという点で極めて優秀な岩茶だと思います。
スッと一本通った細長く続く花香は、上品な香木のような余韻となって残ります。主張し過ぎず、ブレないで何煎も続く味わいのベースは、岩茶らしい力強さを12回の分割払いにしたかのようです。
節目節目で思い出す岩茶、番頭にとっては北斗はそんなお茶です。目立たないけど無くてはならない初期メンバー。ローリングストーンズのドラマー、チャーリー・ワッつさんのご冥福をお祈りしつつ今日は北斗のお話でした。