
茶荘の棚からもういっちょ。
梅をあしらった面長でやや大ぶりな茶壺です。

作者は李碧芳さん。女性です。
20世紀半ばから終わり頃にかけて活躍された作陶家で、国家高級工芸美術師の一人でした。残念ながら2004年にお亡くなりになっています。
紫砂七老の一人である巨匠朱可心さんの高弟の一人で、自身も名作陶家であるだけでなく、後進の指導にも熱心でした。200人を超える李碧芳さんの教え子の中には胡永成、高湘君といった作陶家さんが育っています。
堤梁壺というハンドバッグのような長い手提げの茶壺が有名ですが、伝統的でオーソドックスな形状から意欲的な意匠の茶壺まで手がける、オールマイティな作風は今でも評価が高いようです。

画像で見るより実際には深い赤みを帯びたチョコレートブラウン。きめの細かい老紫泥が使われているようです。この茶壺も周さんの初期のものもそうですが、良い土がまだ十分に手当て出来た時代だったんだなあ、とちょっと複雑な溜息が出ます。

蓋の立体感や觜のカーブなど、細部が一つ一つ「よく出来てるなあ」と感心します。
要らぬ緊張感は無く、かえって親しみを感じさせる安心感があります。だらんと立ってるだけなのにどこにも打ち込む隙が無い、そんな達人(宇野重吉、っつても若い人にはピンとは来ないすね)の佇まいです。口の縁も角の無い綺麗なRがついていて、これはなかなか出来そうで出来ない技巧だと思います。宜興だけに、なんちて。

新品ではありません。小梅さんが昔宜興で勉強用にと確かなルートで手に入れてきた茶壺です。大事にしまっとけばいいのに、時々この茶壺でお茶を淹れたり養壺したりしています。