そうだ、冬茶を飲もう。
そうと決まれば急げや急げ。
お茶棚を漁るの手もどかしく、冬茶の袋を引っ張り出しました。
そういえば、凍頂冬茶をちゃんと飲むのは久しぶりかもしれません。留守番中にお客さまに試飲でお出ししたっけな。それすら定かではありません。
さっそく飲みます。いつ飲んだかも記憶にないくらい、番頭にとってはずっと飲んで来た馴染みのお茶ですが、それでもちょっとワクワクします。
ギュっと丸まった茶葉が徐々にほどけてゆくのを見てたらちょっと長めになってしまいましたが、春茶と較べて冬茶はややしっかり目に出しても持ち味が楽しめて良いと思います。これでいいのだ。
テーブルの上を漂う香りを吸い込みます。春茶と較べると冬茶は香りという点ではやや大人しく落ち着いています。甘ったるいのではなく、かといって青々しくもなく。若草というより夏草のようなちょっと日なたっぽい香りがします。
しっかりと発酵された茶葉なので黄色が強く、少し赤みもあります。高山茶の多くに見られるような淡い黄色ではなく、しっかりと濃い水色をしています。劉さんは春茶冬茶問わず、清香型であっても発酵がしっかりした凍頂らしい凍頂烏龍茶を作ります。昔ながらの、と言っても頑固に拘っているのではないです。葉だけでなく枝の部分も残して味に深みを持たせる為にしっかり発酵させて枝から雑味がでないようにするからです。茶葉を育てる所から製茶まで、実直で誠実な人柄そのままの丁寧なお茶作りだよなあ、劉さん夫婦の顔を思い浮かべながら有り難くいただきます。
岩茶と較べるとグリーニッシュで、春茶や杉林渓と較べるとどっしりした味わい。どこか釜煎りの緑茶を思わせるようなほのかな渋みを伴うコク。それでいて口当たりはあくまでまろやか。甘みは少し遅れて喉の奥から戻ってきます。
口に入る時に青さと少し枯れたような風味を感じます。
季節感でいえば春茶が春らしいお茶だとすれば、冬茶は冬というより秋の風の匂いのようなお茶だと思います。柔らかい陽光と時折頬にあたるひんやりとした風、みたいな陽と陰が共存する季節感…うまく言えないすけど。
葉底。厚みはあるけれど柔らかい葉と程よく残された枝(茎)。大らかでややガサっとした春茶と較べるといかにもふくよかで細やかそうな、持ち味そのまま姿です。
春茶がウキウキするような味わいなのに対して、冬茶はじんわりほっこり。夏の間に身体の中にたまった熱や湿を体外にゆっくり出して出してくれるような美味しいお茶です。ついでに邪気と煩悩も払ってくれたら言う事なしなんだけどなあ。
やっぱうめえ。
15年くらいの間に色んなお茶を飲む機会がありましたが、なんつうかイロハのイみたいな。番頭にとっては「ああお茶って美味しいなあ」と認識をあらたにした「きっかけのお茶」ですんで、思い入れも込みで美味しくいただきました。その割にはご無沙汰だったけど。