肩こりの話でもボディビルの話でもありません。今日はこちらの茶壺のお話し。
茂林僧帽壺、という名前です。
「僧帽」とはそのまんまお坊さんの帽子、って意味です。
僧帽壺というのは歴史ある定形のデザインの茶壺の名前で、作者の楊さんの造語ではなくずっと昔っからあるものです。
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本来のデザインはこんな感じです。六方壺の口(上部)がお坊さんの冠のようになっています。もっと言えばオリジナルのデザインでは前方が低く、後方に向かって高くなっています。このオリジナルデザインは景徳鎮などの磁器に見る事が出来ます。古くは元代まで遡る事が出来る、伝統的形状だといえます。
じゃあ帽子はどこ行ったんだよ、というと胴体に見る事が出来ます。
{を縦にしたようなモスクの屋根にも似た模様がぐるりと施されています。
ははあ、楊さん無精コイたんかな、なんて思いましたが、ちゃんとこれも昔っからある一つの型であるようです。
証書に書かれている「茂林僧帽」というのがその型の名になります。
茂林とは明代の名陶工として名高い李茂林さんの名前です。「茂林」という款が刻印された僧帽壺はまさにこの楊さんの茶壺と同じように口の代わりに胴に僧帽が施されています。
名人上手を多く輩出した明代16−17世紀では皆がこぞって意欲的な茶壺を世に送り出していました。大彬如意壺が有名な時大彬さんもちょうど同世代です。時大彬さんが作った僧帽壺も現存していますが、こちらは至ってオーソドックスな僧帽を持つ茶壺です。
独特の風合いの紫泥が使われています。高六方や龍蛋に使われている紫泥とは少し違います。老紫泥に近い肌の色で何ともいえない艶があります。ええ土、な分お値段も高いです。
やや平たいので投影面積ほどの容量は感じられません。300mlは大きすぎず、でもたっぷり出せるサイズです。焙煎強めとかどっしり系の岩茶を淹れたくなりますねえ。
茶壺のフォルムってえのは基本的には横顔が基準になります。プロファイルってヤツね。デザインであったり作者の意図を一番雄弁に語るのはやはり横から見た姿です。変な言い方ですが横が正面、なんですね。
でもね、茶壺の持つ表情つうか性格みたいなのはこの向きによく表れているように感じます。端正であったり、精悍であったり、愛敬たっぷりだったり。この茂林僧帽はどんなふうに感じます?番頭は素朴で飄々とした好好爺のような印象を持ちました。スタイリッシュ、ではないですよねどう見ても。美味しいお茶を淹れてくれそうではあります。安定した出来で。
小梅さんがかっさらってきた楊さんお勧めの茶壺2題。右の茶壺については明日またご紹介いたします。
そうそう、僧帽筋とカプチーノは由来が一緒なんだとかそうでないとか。なんか面白そうな話っすね。