睦月晦日。あっという間でした一月は。この調子でいくと明日はもう2月になってるに違いない。
さて、昨日に続いて茶壺のお話しです。
楊琴さんの龍吟壺。
昨日の茂林僧帽壺とおおむね同じ約300mlの大ぶりサイズ。大紅袍泥の明るい紅色が映える面長な茶壺です。
ややしもぶくれでフォルムで、低重心なので縦長であっても安定感があります。
胴のぐるりには蘭・菊・竹・梅が描かれてます。四君子、ってヤツですな。高六方壺にも見られる、楊さんお得意の丸みを帯びた六角形をベースにしたデザインです。相変わらず曲線と直線の調和を取るのが上手です。
上から見ると丸く、底は六角形。いわゆる天円地方壺の一つでもあります。
口径が大きくゆるやかなカーブを持つ觜。お茶の出も早いので抽出時間の短い生茶に使っても良さそうです。
そうは言っても把(持ち手)から蓋の擬宝珠(てっぺん)までの距離がそこそこあるので、手が華奢な型は左手で蓋を押さえながら淹れても良いと思います。ま、多少グラついても蓋が外れて落っこちたりする事がまずないんですが、淹れやすい方法で使っていただければ。
茶葉の出し入れもラクラクな大口径。調子に乗ってついつい多めに茶葉入れちゃいそうですが、このサイズなら6〜7グラムが適量でしょう、お茶の種類にもよりますが。
同じく大ぶりな茶海にたっぷり出して大勢でワイワイ飲むもよし、冷めていくとともに移りゆく味や香りをゆっくり楽しむもまたよし。番頭のような無精者にももってこいの容量です。
龍吟壺、というのは茶壺の名前としては昔っから存在してるのですが、「これ」といった定形=約束事がはっきりしないのです。西施であれ漢瓦であれ名のある伝統的な形状の茶壺にはいくつか定義があって、それを大きく外す事は無いのですが、龍吟と名のついた茶壺には共通する特徴が見当たりません。よく見るのは蓋の上に龍(とおぼしき動物)が鎮座してるものです。
楊さんのこの龍吟壺の場合は觜に施された装飾と昇り竜のようなカーブ、そして把に竜尾のような返しがついてるのが龍を表してるみたいに見えます。
龍吟、つうのは龍が鳴くつう意味です。
『龍吟虎嘯』という言葉があります。字面では龍が鳴き、虎が吠えるという意味で、お互いの気持ちや志が通じ合うさま、って事らしいです。同類相哀れむ、みたいな事かしら。人の歌声や楽器の奏でる音が響き渡る様子を描写するのにも使われる四字熟語、なんですって。 龍と虎って永遠のライバルなんすね。虎にしてみれば較べられても「え、でもあっち実在してないじゃん。架空じゃん。」て感じでしょうけど。
ま、辰年ですんでね。