ばんとでごぜます。
ちょっとは役に立ったかしら、の留守番。
小梅さんは朝イチでお誕生日健診を終わらせ、おっとり刀で空港に客人を迎えにいきました。そのまま然るべき地点まで送っていき、3時前に茶荘に戻ってきました。効率のよろしい事で。
お陰様でちょこちょことお客さまにご来店いただく傍ら、空いた時間で凍頂の冬茶を淹れました。
本当は
台湾のメーカーさんが茶荘まで持って来てくださったお茶を先月試飲した時に劉さんの春茶か冬茶と一緒に飲みたかったのですが、わざわざ善意でいただいたお茶を安易に俎上に乗せるのは結果や印象がどうであれ礼を失すると思いやめました。どっち褒めても墜としても誰の得にもなりませんし。
とはいえ、その時に番頭の頭の中の凍頂スイッチがパチンと入ったようです。出来ればちゃんと茶壺で、お茶を淹れやすい環境の時に飲みたかったんすよ、ずっと。
お湯が沸くのを待つのももどかしく、いそいそと淹れます。訳あってお客さまからお預かりしてる茶壺を勝手に使うのは若干気が引けましたが、清香型の凍頂なら色や香りが茶壺に影響を与える事もそうはあるまいと思い使わせていただきました。金継ぎして大切に使ってらっしゃるんですね。こりゃ慎重に使わないと。
熱湯30秒。ホントはもうちょい思い切って時間伸ばしてガッツリ味にしたいところですが自重。もしお客さまがお見えになったらお出し出来るよう、無難な濃さで出しました。
凍頂らしい、青いようなそれでいてちょっと日なたっぽいような香りが茶盤の上に広がります。岩茶のそれとも、雲南のお茶のそれとも違う香りです。
フルーティでもフラワリーでもなく、でもどっちの気配も感じるような、番頭にとっては懐かしい劉さんの凍頂烏龍茶の香りです。
発酵かなりしっかり目。清冽な香りや繊細な味という点では標高の高い山場のお茶には及びませんが、劉さんの凍頂にはしっかりとした芯の強い味の主張を感じます。無骨…ではないですね。朴訥、に近いかもしれません。鳩サブレーのような美味しさであり、番頭にとっては崎陽軒のシウマイ弁当のような圧倒的な最適解でもあります。
春茶のあっけらかんとした爽やかさも好きですが、やはり柔らかさと甘み、そしてぎゅーっと内包されたうま味は冬茶ならではの美味しさです。
しっかりとした発酵が生み出す心地よい渋みがじわっと甘みに変わるのがたまらないです。
美味いなあ。ああ美味しいなあ。独りごちながら杯を重ねました。などと書きましたが実は茶壺のブツ撮りを時折はさみつつの「ながら飲み」。
一所懸命に飲まなくても美味しいし、ちゃんと淹れさえすれば少々冷めてもしっかり美味しいのが冬茶の良いところです。
そろそろお客さまが来られる時間帯にさしかかります。後ろ髪引かれる思いで葉底。350mlの茶海で4杯飲んだんで300x4=1.2リットル。今日はこんくらいにしてやんよ。などと捨て台詞吐きつつ茶壺を綺麗にして昨日のお茶はここまで。
急な留守番もたまにゃいいもんだなあ、なんて思います。
今日からはまた小梅さんが茶座に戻ります。安心してご来店くだされ、皆の衆。