茶葉や茶樹の立場になるのも中々難しいのですが、今日はちょっとだけお茶の「住環境」について。
ざっくりとしてますので例外はいくらでもあります。まあこんなもんですよ、くらいにお読みください。
広い中国をおおまかに分けるとお茶のゾーンは4つ。江南・江北・華南・西南に分ける事が出来ます。
江南は長江の南で雨や霧が多く、長江の北の江北には広々と平原が広がってます。華南は亜熱帯、熱帯の気候で南西には標高の高い高原地帯が広がります。それぞれの気候や標高といった自然条件の違いがバリエーション豊富な中国茶を生み出しているんですな。
そうはいってもほぼ同じ特性を持つ茶樹には共通の「好み」があります。逆に「苦手」も然り。「四喜四怕」=表裏一体となった4つの喜びと4つの恐れを各要素ごとに書くとこんな感じです。
①光;
光を好むが、光を避けたい時もあります。茶樹は十分な日照のもとでアミノ酸や茶ポリフェノールといった含有物を多く合成します。当たり前ですが日光は必須ですので光を好むと言えます。
年間トータルの日照時間なんてえのも茶樹ひいては茶葉の出来不出来を決める大事な要素です。反面、程度な遮光も必要です。日の光から遠ざける事によって茶ポリフェノールは減少してアミノ酸の割合が増えます。この事によりお茶は苦みが少なく味が膨よかになります。また、紫外線も適度であれば色や香りを高める要素になります。高山茶などがその好例です。
②水分;
湿を好み、涝を嫌います。涝、とは水浸しになる、完遂するという意味で「旱」の対義語です。茶樹はおおむね年間1,500mmの降水量、生育期には月間100mm以上の降水を必要とします。水分は必須ですが、「涝」は御法度です。冠水や過度な多湿は木の根を腐らせます。同じ水分でも雨でなく雹や雪が降ると事態は更に深刻です。多雨であっても水はけが良好な土地、例えば傾斜地であればかえって豊富な給水が茶樹に良い影響を与える場合もあります。武夷山のような地形が有利になるんですな。
③土壌;
酸を好み、アルカリを嫌います。
茶樹には弱酸性の土壌が好ましいとされます。概ねph 4.5~5.5くらいでより効果的にミネラルを吸収して健全に成長するそうです。
弱酸性の土壌では有機酸と菌根が共生関係を保ち、栄養素の吸収が活発になり、お茶の味がまろやかで後味が良くなります。
④温度;
温を好み、寒に怯えます。
茶種によりますが、外気温20℃~25℃で最も活発に成長します。一般的に小葉種のほうが大葉種より耐寒性にも対乾燥にも強い傾向にあります。寒涼地に小葉種のお茶が多く、高温多湿な雲南に大葉種が多い事にもその特性を見る事が出来ます。何かイメージでは大葉種のほうが強そうに思えますが、こと気温に関しては逆のようです。
この4つの条件が産地ごとに異なるので様々な味や香りの茶葉が出来るんですね。
ここで挙げた4つの「好き嫌い」はかなり大まかな物差しで、主に採茶前の茶樹や茶葉の成長に限定されます。
実際には採茶の直前〜当日の日照や降雨、製茶(特に晒青時)の天気に我々が口にする「お茶」の出来不出来は大きく影響を受けます。
なんとも複雑に色んな要素が絡み合っています。そう考えると美味しいお茶に巡り会った時の喜びもまたひとしお。