
楊琴さんの茶壺。「金玉満堂」という銘です。
シモっぽい名前ですが、他意はござらん。
『お金(金)や宝石類(玉)で家(堂)がいっぱい(満)になる』という縁起の良い四字熟語。中国の四字熟語って意外と下世話で欲張りなのが多いですね。長じて『知識や才能が豊かである』というやや高尚な意味合いも持つようです。語源が老子の「金玉満堂 莫之能守る」(部屋いっぱいに金銀財宝があったとて、それを守る事は出来ない)という、満ち足りた状態を必死に維持するのはやめておけ、という老子らしい教えですな。て事は四字熟語の切り取り方は真逆じゃないすかね。

余談が過ぎました。本題に戻ります。
縦長のやわらかな膨らみを持つ茶壺で梅をテーマにしています。
伝統的かつメジャーな形状ではないので「石瓢」や「弧玉」のような型名があるのかはちょっとわかりません。

こういった「報春壺」を縦長に伸ばしたようなイメージです。報春壺には「竹報」「梅報」「松報」「桃報」などがあります。それでいうと金玉満堂は梅報春という事になります。

ザ・朱泥って感じの鮮やかなオレンジ色の朱泥。容量は280mlで見た目より入るというか、容量の割に大きさが気にならない(あ、同じ事か)茶壺です。指に合うのか、ぶきっちょな番頭でも危なげなく取り回せます。朱泥なので軽いってのもあります。
高さたっぷりあるので生茶とか白茶、あと紅茶にも良さそうです。

茶荘にはもう一つこの形の茶壺があります。李碧芳さんの手によるものです。こちらは老紫泥。李さんは手提げ型の長い持ち手の提梁壺や花をモチーフにした茶壺が得意な高名な女性作陶家さんです。
李さんの師匠である朱可心さんが報春壺の祖、みたいな存在なので愛弟子の李さんにとってもこだわりのある茶壺なのかもしれません。このあたりのストーリーは長くなるのでまたの機会に。

この茶壺は注文しておいたものではなく、楊さんのアトリエにあったものを小梅さんが頼み込んでやや強引に買ったものです。帰る直前だったのでこれは現品でもともと売り物じゃないので証書もありません。

それにしても完成度の高い茶壺です。口や底の○がちゃんと同心円です。イロハのイではありますが、ここがちゃんとしてるとやはり気持ちが良いのです。
李さんのは軽自動車がギリ新車で買える、くらいのびっくり価格ですが、楊さんのほうは176,000円と安くは無いですが、お値頃でお値打ちです。
茶荘の棚に置いてあります。ご来店の際に是非ご覧ください。