
錦糸町は墨田区、亀戸は江東区、平井は江戸川区で新小岩は葛飾区。荒川区の番頭がいうのもなんだけど総武線のあのあたりはよく判らんです。
ちなみに荒川区は実は荒川(河川のほうね)に接してません。

現金なもので、ちょっと気温が下がると俄然どっしり目の岩茶など飲みたくなります。湿度が高いんで快適とはいえないまでも岩茶にはぴったりの朝です。
お茶箱の中からいくつか候補を引っ張り出し、巌水仙と鉄羅漢と上撰矮脚を箱に戻して手元に残ったのは上撰肉桂。よし、今朝のお茶はお前に決めた。

お前呼ばわりしたのを申し訳なく思うくらいに不敵な面構えの葉姿に気圧されながら5グラムを抜き取ります。焙煎は濃香肉桂ほど強くはないものの、必要十分。当時(2010年産です)の基準で言えば中焙煎かそれよりやや軽めって感じです。
北斗も矮脚もですが、勝手に「上撰」なんて大層な枕詞を番頭ごときに付けられた茶葉の気持ちってどんなでしょう。迷惑っすよね、ハードル上げられちゃって。

茶水色は綺麗な茜色。艶やかで、でも少し憂いを帯びたような。少し思い出すものがあるような…わしゃフジファブリックか。
こんな感じの夕焼けが似合う季節ももうすぐっすね。
杯底香はまず最初に少しくぐもったような陳香が上がってくるので一拍おきます。続いてすぐに本来の持ち味、いや持ち香か、は桃のコンポートかアップルパイのような思いのほか優しい香り。果物と甘さとシナモンの組み合わせって点ではアップルパイがまさに肉桂の3つの持ち味(あ、また言うてもうた)がするのは何だかしっくりきます。

1,2煎目。最初「あれ、思ってたほど甘くないぞ」と若干戸惑います。濃香肉桂のようなこってりとした甘みがなく、ちょっとドライな第一印象。
肉桂らしいどっしりとした骨のある味、ミネラル感などは十分にあります。飲み干してから次の茶杯に口をつけるのをしばし待つと、後からじんわり甘みが出てきてそれが続きます。やや奥手なのかもしれません。

煎を重ねます。これが岩茶です、という説明不要な味と香り。寡黙にして雄弁、なるほど岩茶を代表する品種と称されるのもダテじゃないですな。
同期で畑も同じ馬頭岩肉桂の50号や18,19号あたりと較べるとガツンとくる強さやはっきりとした甘みというそれぞれの長所には並びませんが、それらをバランス良く持ち合わせている印象です。
「丁度良い」感が強い肉桂です。お寿司で言えば「特」ではないけど松竹梅の「松」のイメージですね。穴子一本握りとか天然生本マグロとか、そういうんじゃなくて白身も光り物も貝も良いネタが一通り入ってるヤツ。

絶妙、ドンピシャな好みの焙煎度でもあります。個人的には大好きな巌水仙と似たイメージで似た立ち位置のお茶です。
緊張と緩和のバランスが取れた出来の良い岩茶、それが年を重ねてもっと美味しくなったという印象のお茶です。

綺麗な葉底だこと。
今風ではなく、発酵も製茶も焙煎もしっかりとしたやや古風な作り方なのが見てとれます。

オーソドックスな上質さで、しかも最上級唯一無二ってほど特別ではない「普通に良い肉桂」。そのせいかどこか影が薄いようですが、どっこい侮るなかれ忘れる勿れ。肉桂好きな方は言うまでも無く、肉桂ちょっと苦手…という方にも是非飲んでいただきたい上撰肉桂、でございました。