
近所のキンモクセイが芳香を放っています。今年はずいぶんと遅かったように思います。去年とか一昨年は二度開花したのになあ。
よおしそれなら早速桂花香のお茶を飲むべえ。イソイソと棚から黄観音とか金牡丹なんかを引っ張りだそうとしていたら…

雀舌と目が合ってしまいました。そういやここん所しばらく飲んでなかったなあ、と袋を開けて細長くてよじれた特徴のある茶葉を眺める事しばし。
よし、今日はこれ飲むべえ、という事になりました。2011年の上撰雀舌じゃなく、2023年つまり直近の雀舌です。茶荘の棚に並んでるのも、お試しセットに入っているのもこの雀舌です。

雀舌は茶葉が華奢なのでけっこうな量だな、くらいでちょうど良いです。目分量でかなり多めに秤に乗っけたら5.2グラムでした。面倒くさいんでそのまま使います。

ぎっちょ仕様に茶器を配置して準備完了。今日は烏泥の倒把西施を使います。220mlちょいの容量なのでお湯は200mlくらい入ります。沸きかけのお湯で茶壺の外側から内側へしっかり予熱します。やっぱり茶盤があるとこういう時に便利です。ついでに茶海も温めたら準備完了。茶葉を茶壺に入れたらちょうどお湯が沸きました。軽く0煎目でちょっとのお湯で茶葉を温めたらそのまま1煎目、立て続けに2煎目を淹れます。

お茶をたたえた茶海からは雀舌らしい花香。キンモクセイではなくジンチョウゲのようなややおしとやかな香りです。お香とかお着物のような香り、って書くと漠然としていますがそんな和っぽさも感じる香りです。
一方杯底香は新茶の頃と較べても、いや半年前と較べてもだいぶねっとりとした蜜っぽい甘い香りがします。茶水色はハチミツのような橙色。これも少し赤みが出てきたように見えます。

口を付けると、流石に「飲む香水」、という香り。こってりではなく、さらりとした甘み。ややさっぱりとした味わいはどこか凍頂冬茶を思わせます。
とはいえ頼りなさはなく、岩茶らしいミネラル感もあります。
今でこそ軽焙煎の岩茶はだいぶ見慣れましたが、初めて見た時は「おいおい、大丈夫か」と心配になる淡い色でした。雀舌と丹桂がそんな感じだったと記憶しています。

この2023年の雀舌はここ数年で一番、という出来の良さです。雀舌はジンチョウゲっぽい花香と白檀のような香木の香りを併せ持つようなお茶ですが、この年の雀舌は出来たての時はやや花香が勝っていました。今飲むと香木っぽさがそれに拮抗しているように感じられます。
白瑞香であったり、梅占であったりと香りや甘さが強烈な岩茶がここの所目白押しで、それらと較べると今や大人しく感じられる雀舌ですが、控え目ながら不思議と惹きつけられる香りとすっきりとした甘みは唯一無二のものです。桃李物言わざるとも…という感じで物静かだけど存在感のある味わいを再認識しました。

煎を重ねて薄くなってもなお味わいは続きますが、雀舌の持ち味である香木のような奥深い韵は感じられなくなります。煎はほどほどに、今日はここまでにします。

雀舌の名の由来でもあるねじれた小ぶりの茶葉。細くて薄いので一枚一枚が軽く、水仙のようないかにも健康優良児という見た目ではありません。伝統ある品種なのに近年産量が減っている所以でもあります。絶滅危惧種、になっていないといいんですが。もしかしたらこんなに出来が良くて値段がこなれた雀舌がふんだんに手に入る、なんて事はもう無いのかもしれないな。なんて考えると一昨日目一杯仕入れたのは正解だったんでしょう、きっと。

冷めたら甘みが強くなりました。最後の2煎くらいは出してからおいといても良いかもしんないです。