
おわかりいだだけただろうか……
うそうそ、何も映ってませんて。いや、夜が長くなったなあ、って思って。5時半でもうこんくらいの暗さ。釣瓶落としとは良く言ったもんです。

暑い盛りでも美味しいっちゃ美味しいんですが、気温が下がるとますます熱いお茶が美味しくなります。今なら何飲んでも美味しいんだけど、さて。

選んだのは水仙です。なんか動機がアレなんで考えようによっちゃ水仙に失礼ではありますが、あまり重たいものちょっとしんどくて、でもあまり華々しいとかエキゾチックなのもちょっと違いかな、なんて。
要するになんとなくダラダラ飲みたい時にちょうど良いお茶です。けっきょくマイルドにディスってますけど。
水仙らしい、大ぶりで厚みのあって黄緑色が強い茶葉。屈託の無い陽キャな見た目の葉を5グラム使います。

沸き立ての熱湯、短めの時間でサッと淹れます。水仙は湯温が低かったり、長く置いて出すとちょっとひねくれたような香りが出がちです。切り花の根元のほう、って感じです。なので茶葉タップリ、湯温高め、時間短めにすれば美味しく飲めるかと。
杯底香は淡い花の香り。百合とか水仙といった背の高い大ぶりな花のそれです。エキゾチックではなく、オリエンタルでちょっと和も感じさせる落ち着いた香りといえます。

一口めから口の中に広がる穏やかな花香と水仙らしい酸味。ツバが湧くとか口がすぼまるような緊張系の酸っぱさではなく、開放的で後を引かない酸味です。老叢のような厚みも、巌水仙のような強さもないですが、いかにも水仙、といった番頭にとっては馴染みのある味です。酸味というアクセントが好き嫌いは多少あるでしょうが、本当にオーソドックスで五角形のパラメーターが綺麗な正五角形になるような、極端に秀でた所も足りない所も無い岩茶の手本のような味です。

常々感じている事ですが、あまりにポピュラーな品種な故か「水仙が好きです」と言うのはどこかネガティブな印象を持たれるようです。好きな寿司ネタ訊かれて「サーモン!」とかお握りの具だったらツナマヨ、あたりと似てるかもしれません。
ただ、舐めてもらっては困るのです。開店寿司における寿司ネタランキングは14年連続でサーモンが1位で、コンビニおにぎりではツナマヨが強敵鮭を抑えてこちらも1位。
水仙も同じで、岩茶の生産量でいえば水仙と肉桂が他を圧倒しています。
肉桂が山場(産地)が大きな付加価値になるのに対して、水仙は著名な山場も勿論価値がありますが、老叢のように樹齢の経ったものや茶樹の大きく育ったもの、あるいは呉三地の高山老叢のように標高の高い場所のものに価値を見いだされる傾向があります。使い勝手の良い品種なのでたくさん育てられている分、ピンキリの差が激しいお茶でもあります。たぶんそのあたりがイマイチ軽んじられる理由ではないかと。

うめえ。煎を進めると若干落ちるのが早いかな、という弱点はありますが、「水仙らしい」味と香りという点では巌水仙や老叢よりもこっちのほうが判りやすいと思います。後ろのほうの煎でまたふわっと花の香りが復活したりするので飲み飽きないのも好印象です。

大ぶりで厚みがある茶葉。健康優良児でもあります。そんなモンで生産性が高いのも水仙が盛んに作られる理由でもあります。
武夷山の比賽(コンテスト)でも大紅袍部門、肉桂部門と並んで必ず対象に選ばれるとても大切な品種、「普通」の水仙は実は「普通じゃない」んです。
久しぶりにじっくりと味わって水仙を飲みました。
あれ?て事は番頭もどこかでコイツを軽んじてるのかもしれません。無意識に。
スマンスマン。