
明日は清明節。中国茶にとってはお正月とも言える大切な区切りの日です。ウチはもっと早くから摘む雲南のお茶ともっと遅くに摘む武夷山のお茶がメインなのであまりピンと来ませんが、龍井茶をはじめとする江南の緑茶では清明節の前に摘んだ=明前摘みというのは珍重されます。
明前摘み=初鰹、清明節=八十八夜、くらいにお考えください。

今日は紅茶を飲みます。今年の新茶ではなく昨年の早春摘みの雲南紅茶です。
大雪山古樹、の紅茶は2022年にほんのちょっとだけ仕入れたものがとても良い出来でした。それ以来二年連続でサンプルを検討したのですが、あいにくその22年のものに及びませんでした。古樹紅茶なので量が少なく、何種類ものサンプルを飲み比べるってのが出来ないのでそうなるとまた一年待たないといけません。そんなこんなでようやく「これ、これです」と小梅さんが満足したのがこの25年の茶葉。三年かかりましたが、その間に大雪山古樹の美味しい白茶に出会えたので結果オーライかもしれません。

もう4年、たぶん最後に見てから3年近く経ちますが、気品のある大雪山紅茶の葉姿はよぉく覚えてます。その時のものと較べると25年の茶葉は葉がしっかりしていて、金毫もそれほど目立ちません。大雪山の茶葉らしい繊細さはありつつも、古樹らしい大らかさのある頼もしい見た目です。同じ25年の邦東古樹の春茶のサンプルが少し手元にあるんで、今度飲み比べてみましょうかね。

均整の取れた惚れ惚れする茶葉を思い切って5グラム。本当は3グラムでもじゅうぶん過ぎるほどですが、あえて濃い目強めに出してみます。

100℃の高温で。0煎目で茶葉が浸るくらいの少なめのお湯で葉を軽く潤したら口からお湯が溢れるくらい(実際溢れました)お湯を注ぎます。いわゆるジャンピングさせるような勢いではなく、茶器の肌にお湯を注いで茶葉が斜め回転するようなイメージで。口に集まった泡を蓋でササっとよけたら25秒ほどで出し切ります。色覚に問題のある番頭が言うのもなんですが橙色と向日葵色の中間くらいの色。いかにも早春摘み、っていうキラキラした黄色っぽさではないです。反面典型的な古樹紅茶よりは淡いようにも見えます。

杯底香はツツジの花蜜のようなふわりと華やかで澄み渡る甘み。葉っぱっぽい緑よりも焼き栗のようなこっくりとしたやさしい香りです。鳳慶に代表される典型的な滇紅の焼き芋っぽさよりは控え目な感じ。

口いっぱいに広がる味は「これは何?」と訊かれたら明らかに紅茶なんだけど、いわゆる頭にぱっと浮かぶ紅茶の味の構成とは違います。
しっかりとした渋みはあってもそれが口の中に留まらず、刹那解けていくようなもので。甘みは強くないけどくどくないギリギリのバランス。
酸味を伴わない柑橘っぽい爽やかさはちょっと伊予柑っぽくもあり。
それぞれに秀でた個性のピースですが、昨年入荷したばかりの時は色んな方向にやや散漫になっている印象がありました。一年経ってそのピースにまとまりが出てきて一つの大きな味の個性を構成(ダジャレです)しているように感じられます。

茶葉たっぷり使ってるので中盤以降も味がヘタるどころか逆に厚みが出てきたようです。フルーティさが前面に出てきて、同時に少しミントの葉ようなスーっとしたアクセントが舌に残ります。茶杯空ける手が止まらなくなるタイプの紅茶です。
序盤、中盤、後半と隙が無いまさに全盛期の羽生将棋のような圧倒的なクイーン感があります。褒めすぎかしら。

古樹生茶のようなしっかりとした見た目、触るとシルキーな柔らかい葉底。でもちゃんと雲南の紅茶らしい色です。葉底だけ見てるともうちょっと大雑把な味わいを想像してしまいますが、芯が強いけど繊細な味は唯一無二です。

口福々々。
一日早い清明節の何よりのお祝いになりましたとさ。